先月、4年ぶりにフロリダ州を訪れ、前職のワイス・スクール(ギフテッドに特化した私立学校)でファーガソン校長と創立者のワイス博士に会ってきました。
4年も経ったとは思えぬほど、フロリダはゆっくりと時間が流れていて一瞬のうちに過去へタイムスリップ。ギフテッド教育の話に花が咲きました。
その中でファーガソン校長の推しの一冊、校長と交流の深い臨床心理士のパトリシア ガットーウォールデン 博士(Patricia Gatto-Walden)の著書 「ギフテッドの“すべて”を受け入れるということ」Embracing the Whole Gifted Selfを紹介してくれました。
まだ日本語には翻訳されていないので、日本語でちょっとご紹介させていただきます。

ギフテッドの子どもと向き合う:そのまま全て「まるごと」を受け入れるということ
ギフテッド(高い知的能力を持つ子ども)というと、どこか特別で、勉強が得意で、将来が楽しみな存在――そんなイメージを持つ方も多いかもしれません。
でも、実際にギフテッドの子どもを育てている親御さんは、それとは違う現実に直面しているのではないでしょうか。
「どうしてそんなに些細なことで泣くの?」「なぜ眠れないの?」「なんでそんなに不安がるの?」
パトリシア ガットーウォールデン 博士著 「ギフテッドの“すべて”を受け入れるということ」は、そうした疑問に優しく寄り添い、ギフテッドの子どもの“ありのまま”を理解し、支えるための視点を与えてくれる一冊です。
「ギフテッド=頭が良い」ではない まず大切なのは、ギフテッドというのは単に「頭が良い子」ではない、ということ。
彼らは知性だけでなく、感情や感覚、道徳心や直感も非常に鋭敏で、言葉にできないほど深く物事を感じ取ることがあるのです。
そのため、他の子と同じように育てようとすると、「なぜこの子は普通にできないのか?」と親も子も悩んでしまうことになります。
キーワードは「Whole (全部)」
「そのままを、まるごとを」 受け入れる 本書で何度も繰り返されるキーワードは、「whole(全部)」という言葉です。
ギフテッドの子どもは、知的な面だけで評価されがちですが、それでは彼らの一部しか見ていないことになります。
彼らの強すぎる感情、繊細な感覚、豊かな想像力、道徳的な葛藤――そういった全てがギフテッド性の一部なのです。
ときには周囲に理解されず、「自分は変なんじゃないか」「この世界に自分の居場所はない」と感じてしまうことも少なくありません。

「過度激動性(Overexcitabilities)」
「過度激動性」を理解する 本書では、「過度激動性(Overexcitabilities)」というギフテッドの特性について詳しく説明されています。
これは、以下のような形で現れます:
• 知的激動性:質問が止まらない、物事を深く考えすぎてしまう
• 感情的激動性:小さなことに強く反応したり、共感しすぎたりする
• 感覚的激動性:音、光、匂いなどに敏感
• 想像的激動性:空想や物語の世界に深く入り込む
• 運動的激動性:じっとしていられない、常に体が動いている
これらは一見「困った特徴」に見えるかもしれませんが、実はその子の才能や創造力の源でもあります。
親がまずそれを「異常」と捉えずに、その子の本質として理解してあげることが、子どもの自己肯定感を育む第一歩です。
家庭をセーフ・スペース「安心して戻れる場所」に
ギフテッドの子どもは、外の世界で「普通」に見せようと努力し、疲弊してしまうことがあります。
本当の自分を出せない、わかってもらえない――そんな思いを抱えている子どもたちにとって、家庭だけは「自分のままでいられる場所」であってほしいのです。
「こんなことで泣かないの」「また不安なの?」と否定せずに、子どもの感情をまるごと受け止め、ただ聴くこと。
それだけで、子どもは少しずつ「自分でいいんだ」と思えるようになっていきます。
親自身も「受け入れること」を学ぶ ギフテッドの子どもを育てる中で、親自身が孤独や不安を感じることも多いはずです。
他の親に相談しても理解されず、「育て方が悪い」と思われたり、先生にも伝わらなかったり…。
そんなときこそ、親自身も「わたしはこれでいい」と自分を肯定することが大切です。
完璧でなくていい。 困ったときは、同じような経験を持つ仲間とつながったり、この様な本から力をもらったりしていいのです。

最後に――「深遠な次元で存在する」子どもたちへ
ガットーウォールデン 博士は、本書の中でこう語りかけます。 “Your gifted child exists deeply.” 「あなたの子どもは、深遠な次元で存在しているのです。」
その“深さ”を、周囲が「過剰」として抑え込むのではなく、豊かな個性として育てていけたら――ギフテッドの子どもたちは、自分らしく、安心して生きていくことができるはずです。
子ども全体を、まるごと受け入れること。
それは、ギフテッド育児の中で最も大切で、最も尊い贈り物かもしれません。
いかがでしょうか。 ギフテッドとして何ができるか、できないか、という事よりも、ギフテッドの存在そのものをまるごと尊重し、愛していく子育て。
Doing よりもBeing。 。。。実践していきましょう!
