2eギフテッドだからこそ英語を学ぶ
AIが発達した今こそ、ギフテッドの子どもが英語を学ぶ価値とは?
〜自分で考え、つながり、表現する力のために〜
by 近藤五百子
最近では、スマートフォンで話しかけるだけで、AIが瞬時に外国語を翻訳してくれるようになりました。
翻訳アプリ、音声認識、同時通訳…。
たしかに、英語が苦手でも「なんとかなる時代」になったと言えるかもしれません。
では、これからの時代に、ギフテッドの子どもたちが英語を一生懸命に学ぶ必要はあるのでしょうか?
答えは、**「YES」**です。
むしろ、AIが言葉を代わりに扱えるようになった今だからこそ、ギフテッドの子どもたちには、英語を「自分の力で学ぶこと」がこれまで以上に大きな価値を持つと言えるでしょう。
その理由を、3つの視点からお伝えします。

1. 英語は「文化を包んだことば」世界の感じ方と思考を知る扉
英語は、ただ言葉を伝えるための道具ではありません。
それは、世界の人々がどのように物事を感じ、考え、伝えようとしているのかを映し出す「文化そのもの」でもあるのです。
たとえば、日本語では自分の意見はあまり主張せず、「空気を読む」「曖昧にして調和を保つ」といった表現が重んじられる場面が多くあります。
一方で、英語では「I think…(私はこう思う)」「Let’s agree to disagree(意見が違ってもいいよね)」といった、自分の意見や立場を明確に伝える文化が根付いています。
これは、どちらが良い・悪いということではありません。それぞれの言語が、その国の歴史、社会の価値観、人との関わり方を自然に表しているのです。
つまり、英語を学ぶということは、単に単語を覚えることではなく、「他の文化の目で世界を見る」練習をしているとも言えるのです。
ギフテッドや2eの子どもたちは、しばしば「ものごとを多角的に捉える力」や「違いに敏感な感受性」を持っています。
英語を通して、他の文化に触れることで、「こういう考え方もあるんだ」「こういうふうに感じる人もいるんだ」と、多様な視点を自然と受け入れられるようになります。
また、英語圏の社会には、「違うこと」が歓迎されるという文化があります。
異なる価値観、バックグラウンド、能力、考え方を持つ人たちが共に学び、語り合う土台が整っています。
英語という言語を学びながら、子どもたちはこうした「違いを力に変える」文化そのものにも触れていく貴重な体験なのです。
英語を学ぶことは、世界と話すための言葉を得るだけでなく、世界の考え方を「感じる力」を育てることでもあります。
そしてそれは、他者を理解し、自分を表現するための大きなステップになります。
だからこそ、英語は「ことば+文化=生きた知恵」。
そのことを知ったとき、子どもたちの学びは言語を超えた「人生の旅」へと変わっていくのです。
「感じ取る力」を持っていることは、知的な深さと広がりを持つ大きな差別化ポイントになります。
2. 世界と「つながる力」=自己表現と共感のための英語
AI翻訳を使えば、外国の人ともある程度のコミュニケーションができます。
しかし、それはあくまで「伝言ゲーム」のようなもので、自分の言葉で、心の奥にある想いや考えを伝えることとは違います。
ギフテッドの子どもたちは、年齢に関係なく、自分の考えや感じたことをしっかりと持っていることが多いです。
しかしそれを母語でもうまく言葉にできないことがあります。
英語という別の言語を持つことで、「I think…」「I feel…」というシンプルで力強い表現ができるようになり、自己理解や自己肯定感の向上にもつながることがあります。
さらに、英語ができることで、海外の同じような感性や興味を持つ仲間たちと直接つながることも可能になります。(例)海外の鉄道ファンサイト
国や文化が違っても、知的な会話を交わせることは、彼らにとって大きな喜びです。
言語には、直接つながる喜びがあるのです。
そして、「自分には世界に仲間がいる」と感じられることは、孤独を感じやすいギフテッドの子どもたちにとって、かけがえのない安心にもなるのです。
3. 世界の舞台で輝く
ギフテッドや2e(Twice-Exceptional)の子どもたちは、ときに日本の学校や社会の中で「自分はちょっと変わっている」と感じ、孤独を抱えることがあります。
教室で浮いてしまったり、同年代の子と話が合わなかったり、先生や友達から誤解されることも少なくありません。
「どうして私は普通にできないの?」「なんで人と違うの?」――そんなふうに自分を責めてしまう日もあるかもしれません。
でも、英語というツールを持てば、世界は一気に広がります。
アメリカやカナダ、ヨーロッパ、オーストラリアには、ギフテッドや2eの子どもたちを理解し、支える学校や教育プログラムがたくさんあります。
そこには、自分と同じようなギフテッドの子どもたちが集まっていて、それぞれが自分らしく学び、活躍できる方法を模索しています。
英語ができることで、そんな仲間たちと出会い、話し合い、共に学ぶことができるのです。
そして何より、「世界に仲間がいる」と感じられることが、どれほど大きな希望になることでしょうか。
また、英語ができれば、日本の枠組みにとらわれず、それぞれにふさわしい将来の可能性を、世界中から選ぶことができます。

英語は、その扉を開くカギです。
それは単なる語学スキルではなく、「各々が生きる場所を、自分で選ぶ力」そのものなのです。
英語圏はもちろんのこと、ヨーロッパなどでは英語使用率が非常に高く、ビジネスや大学教育も英語中心の国々が多数存在します。
ドイツやオランダ、そして北欧諸国は英語力が高く、教育・テック・サステナビリティ分野の企業では英語が標準言語になっている場合もあります。
ドバイなど、多国籍な職場が多く、英語だけで仕事ができるところもあります。
英語ができるだけでこれだけ選択肢が爆発的に増えます。
ギフテッドとの資質を最大限に活かし、伸び伸びと活躍できる場は、世界に必ずあるのです。
おわりに:AIが「翻訳」をしてくれるからこそ、人間は「対話」できる力を育てよう
これからの時代、AIは私たちの暮らしの中でますます身近になり、便利なツールとして活躍してくれます。
しかし、AIは「意味を伝える」ことはできても、「意味を感じる」ことや「共感する」ことはできません。
だからこそ、ギフテッドの子どもたちには、人間らしい知性と感性を持って、英語を自分の言葉として学び、使いこなしていってほしいのです。
そして「世界の一員」としての自覚と喜びを是非味わっていただきたいのです。
英語を学ぶということは、世界の知とつながり、自分自身をより深く理解し、そして他者と本当に通じ合うための力を育てること。
それは、どんなにAIが発達しても、人間にしかできない、大切な営みなのです。