学齢前幼児期に光るギフテッドの特徴 

ギフテッドの発達シリーズ ②  3.5歳~5歳

早期発達の理解が、子どもの未来を守る

ギフテッドの幼い子どもたちは ー4歳や5歳であってもー 
私たちが一般的に想定する多くの就学前児童や低学年の子どもたちとは異なるかたちで、
世界を理解しようとする強い欲求をもっていることが少なくありません。
彼らは、知的にも創造的にも、自分の思考を働かせ、さらに広げていきたいと強く願っています。

— Smutny, Walker, & Honeck (2015)

ギフテッド教育の研究では、才能の発達は突然始まるわけではなく、乳児期から幼児期にかけての発達の変化の中でゆっくりと芽生えるものだとされています。

フロリダ州のギフテッド教員育成コース(Beacon Educator) 」では、子どもの発達を4つのドメイン①身体②認知③社会情緒④精神/道徳)から理解することが重要であり、幼児期の発達の節目はギフテッドの早期兆候を見逃さない上で大切な材料となると指導しています。

実際、私が勤務していたギフテッドに特化した私立学校では、3歳児からのクラスが設置されており、幼児期の“才能の芽”を早期に見つけて伸ばす教育が行われていました。

入学の時点では、ハワード・ガードナー博士の「多重知能理論(Multiple Intelligences)」を基盤にIQのみで判断するのではなく、言語・論理数学・身体運動・空間・音楽・対人・内省・博物的知性など、多様な能力や特性を総合的に評価して入学適性が判断されます。

そして、ギフテッド教育の第一人者であるジョセフ・レンズーリ博士の、

「ギフテッドとは生まれつき固定された能力ではなく、発展しながら形成されていくものである。
ポテンシャルのある子どもは、適切な励ましと時間、努力によってギフテッドとして開花していく」

という理論に基づき、潜在的な能力を持つ子どもたちの可能性を最大限に引き出す教育が実施されていました。


単なる先取り学習ではなく、個々の強みを育て、伸ばし、未来のギフテッドへと育てていくアプローチが中心となっていました。


この時期に専門的な観察と適切な環境が与えられることで、子どもたちは自分らしい学び方や興味関心を自然に発展させていっていました。

ただし、すべての子どもが自動的に進級できるわけではありません。


ギフテッドとして義務教育課程(日本の幼稚園年長に相当)へ進むためには、その子の特性や適性を丁寧に確認するための選考プロセスがあり、子ども一人ひとりにとって最適な学びの場が選ばれていました。

幼児期は、心身の成長が最も大きく起きる時期です。

一般的な発達の“平均値”と比べて、突出したスピードで成長する部分と、逆に極端に幼く見える部分が混在する「アンバランスさが見られることが、ギフテッドの幼児にはよくある特徴です。

これは問題ではなく、才能が育つ自然なプロセスだと認識することが重要です。

今回は幼児期のギフテッドについて、学校での実体験とギフテッド教員育成コースで学んだことを中心にお伝えしたいと思います。

早熟さと未熟さが同時に存在する発達

幼児期のギフテッドは、早熟さと未熟さが同時に存在するという、独特の発達を歩みます。
それは問題行動でも、育て方の失敗でもありません。

才能が育つ過程で自然に起こる、発達のかたちです。

ギフテッド教育の分野では、“No child was born gifted.”生まれながらに完成されたギフテッドの子どもはいない
という考え方が広く共有されています。¹

ギフテッドとは、生得的な潜在能力が、家庭や教育環境、経験、周囲からの理解といった環境要因との相互作用の中で、時間をかけて形成されていく発達的概念だからです。

先天的要因(遺伝的資質)と環境要

研究においても、ギフテッド性の発現は
先天的要因(遺伝的資質)と環境要因の複雑な相互作用によって生じるとされており、その影響を単純な割合で切り分けることはできないとされています。²

一部の行動遺伝学研究では、認知能力の基盤となる資質について遺伝的要因がおおよそ40〜60%程度の影響を持つ可能性が示唆されていますが、それは能力の「発現の可能性」を示すものであり、才能がどのように育ち、どこまで伸びるかを決定するものではありません。³

特に幼児期は、心身の発達が著しく、知的理解の速さと、情緒的・身体的発達のペースにズレ(非同期発達)が生じやすい時期です。このズレが理解されないまま成長すると、子どもは「できるはず」「扱いにくい」と誤解され、

★ 孤立

★ 自己否定

★ 不適応

★ 不安や抑うつ

★ 登校拒否

といった二次的な困難を抱えやすくなります。

だからこそ幼児期に大切なのは、「早く伸ばすこと」や「特別に仕上げること」ではなく、

☆ 発達のズレを受け止め、

☆ 強みを大切に育て、

☆ 心が安心できる環境を整えること。

そのような理解と支えがあってこそ、子どもは「自分はこのままでいい」「学ぶことは楽しい」と感じながら、
自分の力で未来へ進んでいくことができます。

幼児期の理解は、才能を評価するためのものではなく、才能と心の両方を守り、育てるための土台です。


それは、子どもの人生を長い時間支え続ける、最も静かで、最も力のある支援と言えるでしょう。

幼児期(3歳~5歳)のギフテッドに見られる主な特徴

認知(思考・言語)の発達が早い

ギフテッド幼児は、同年齢の子どもたちと比較して、

☆単語の習得が速い、語彙が豊富

☆文字や数字への興味が早期に現れる

☆質問が非常に多く、本質的な問いを投げかける

☆因果関係や抽象的な概念を理解する力が強い

例えば、3歳でひらがなを読み書きできたり、5歳で宇宙や死について質問したりすることがあります。
これは「特別な教育をし過ぎたから」ではなく、本来持つ認知システムが先に成熟しているため起こる自然なプロセスです。

社会・情緒面の発達のギャップ

幼児ギフテッドの多くは、

☆感受性が非常に強い

☆不公平・嘘・暴力などに敏感

☆完璧主義または極端な失敗不安を持つ

☆同年齢の子どもと合わず、年上の子や大人といたがる

Beacon の資料では、こうしたギャップが生まれるのは、知的年齢と社会情緒の年齢が一致しないためだと説明しています。
頭は8歳レベルで理解できても、感情は5歳のままのことがあります。
そのため、周囲の大人は「頭がいいのだから、できて当然」と期待してしまい、子ども自身が苦しむことがあります。

感覚・心理面の“強さ(Intensities)

☆幼児ギフテッドは、五感や感情の強さが特徴的です。

☆大きな音、特定の布や服の質感、光に過剰反応

☆細かい音や変化に気づく

☆興味に没頭し、長時間集中する

☆エネルギー量が多く動き続ける

これは「問題のある行動」ではなく、脳内の処理スピードと感覚入力の多さに由来する特性です。
しかし理解されないと、ADHDや発達障害と誤解される場合があります。

よくある誤解と、子どもを守るための視点

誤解1:早くできるのだから、全部早くできるはず

→ できる部分とできない部分の差が大きいほど、ギフテッドらしい成長です。

誤解2:頭がいいのだから、友達とうまくやれるはず

→ 知的好奇心のレベルが合う同年齢の友達を見つけることは簡単ではありません。

誤解3:幼児のうちから特別扱いしてはいけない

→ 才能は「大切に扱う」ことが早期支援です。特別扱いとは異なります。

幼児期のギフテッドを支えるために大切なこと

1)発達のズレを理解し、「できない部分」に寄り添う

知的能力が高くても、情緒面は年齢相応でよい。
「泣かないの」「しっかりしなさい」ではなく
「怖かったね」「つらかったね」と気持ちを言葉にしてあげることが支えになります。

2)集中を止めず、興味を応援する

没頭する姿は、将来の才能の核となります。
安全の範囲で “好き”を伸ばす環境 を用意しましょう。

3)比べない・競わせない

ギフテッド幼児は他者評価に敏感です。
比べる対象は「昨日の自分」。

4)安心できる大人の理解が最大の支援

早期に理解されることは、のちの自己肯定感につながります。

学齢前幼児期:発達状態のチェックリスト

※これは診断ではなく、観察の目安としてまとめたものです。
「いくつ以上ならギフテッド」という明確な数の基準はありません。これは、NAGC(全米ギフテッド協会)も公式に否定している考え方です。

本チェックリストは、診断や判定を目的とするものではなく、保護者の方が日々の養育や関わり方を考える際の参考資料として提供しています。

(※転載の際はご連絡ください。)

身体・感覚的要素

特性・兆候説明
□ 様々な身体・感覚要素で早期発達がみられる

□ 感覚が鋭い
*脳は5歳までに成人時の約90%の重さに達し、身体の他のどの部位よりも速いスピードで発達する。

*身体的な筋力が増し、体のプロポーションは次第に大人に近づく。

*走る・跳ぶ・片足跳びなどの運動能力が著しく向上する一方、書く・描くといった微細運動能力は、比較的ゆっくりと発達する。

*運動能力における男女差が現れ始める

ーーーーーーーーーーーー
*エネルギー量が多く動き続ける

*細かい音や変化に気づく

*興味に没頭し、長時間集中する

認知・言語領域

特性兆候説明
□ メタ認知(思考について考える力)が早期に形成され始める。

□ 文字や数字への興味が早期に現れる。
*優れた記憶力と、知識を他の状況へ転移させる力。

*非常に強い知的好奇心。

*抽象的思考力をもつ。

*因果関係や抽象的な概念を理解する力が強い

*相手や状況に応じてコミュニケーションの仕方を調整できる。

*早期から話し、読み始め、語彙が非常に豊かである。

*言語能力が急速に発達し、6歳頃までに高度な文法理解を身につける。


社会・情緒領域

特性
□ 同年齢の子に比べ、社会性が発達し、情緒や感受性が高い。*真実性や公正さ(フェアプレー)に対する強い関心。

*年齢以上に成熟したユーモア感覚。

*共感性の早期発達。

*協同的な遊びにおいてリーダー的役割を担うことがある。

*一人遊びや他者との遊びが、より複雑で想像力豊かなものへと発展する。

*活動を自ら始める力を支えるエネルギーの増大。

*自己と他者の違いに対する早期の気づき。

*自立心や環境を自分でコントロールしたいという欲求の高まり。

*同年代の子どもよりも大人との方が円滑に関わることが多い。

*自己主導的で自立して学ぶ姿勢がある。

*完璧主義的傾向が見られることがある。


精神・道徳的領域

特性・兆候説明

□ 道徳的・精神的な行動や信念を示す。

*同年齢の子どもたちと比べると、道徳的・精神的な課題に対して、より強い強度で、かつ長期間にわたって葛藤しやすい傾向がある。

*同年齢の子どもと比べて、より高度な意思決定能力、優れた分析力、そして高い自己認識(自己理解)を示す。(Oswalt, 2015)

(Oswalt, 2015) Table Copyright 2025-2026 Gifted World Ihoko_Kondo 

¹ Renzulli(1978)

² NAGC Early Childhood Position Statement

³ Plomin et al.(2016)ほか行動遺伝学研究



Beacon Educator (2025). Gifted: Guidance & Counseling – Florida K-12 Gifted Endorsement Training.
Chapter 1–2 Development of Giftedness. BeaconEducator.com.

Neihart, M., Pfeiffer, S., & Cross, T. (2016). Understanding the social and emotional needs of gifted children.

Bainbridge, C. (2018). Characteristics and needs of gifted children.

Clark, B. (2013). Growing Up Gifted: Developing the Potential of Children at School and at Home.

Delisle, J., & Galbraith, J. (2015). When Gifted Kids Don’t Have All the Answers.

Oswalt, A. (2015) Sensitive periods in child development.

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