ギフテッドの“内的世界”を理解する

ギフテッド(才能児)という言葉に、「頭がいい」「成績が良い」というイメージを重ねる方は少なくありません。

多くの方は、単に「IQの高い人」というだけの認識ををしていらっしゃるようです。

先日、第一回の日本ギフテッド2E学会で口頭発表させていただき、「ギフテッド教育とはエリートを育てる英才教育ではなく、 多様性を育むサポート(支援)教育である」という事を広く発信していくミッションを感じてきました。

「“特別”ではなく“多様性”を育てる」

一人でも多くの方に理解していただきたいと思って帰って参りました。

これからもギフテッド研究先端のアメリカの論文などを、どんどん紹介させていただくと共に、ギフテッドに特化した私立学校での実体験を皆様にお伝えしたいと思います。

今回は、アメリカのギフテッド研究で広く引用されるマーサ・モーロック博士の、ギフテッド性の本質は“内的世界の質の違い”にこそある、という研究記事をご紹介したいと思います。

ギフテッドの子どもは「世界の捉え方そのもの」が深く、複層的で、同年齢の子と質的に異なる体験をしていると述べられています。

本記事では、Davidson Institute(アメリカのギフテッド教育支援機関)に掲載された研究記事「Giftedness: The View from Within」をもとに、日本のみなさんに役立つポイントをご紹介します。


ギフテッドの子どもは“別の現実”を生きている

同じ出来事でも受け取り方がまったく違う

モーロック博士 氏は、10歳の「グレッグ」というギフテッド児の例を紹介しています。

クラスで起きた些細なトラブルを、彼は過去2年間の記憶・関係性・論理・倫理観と関連づけて捉え、長文に整理して母親に説明しました。

一方、相手の子どもは「あいつがやったからやり返した」という単純な認識。

同じ出来事を体験していても、世界の見え方が根本的に異なるのです。

幼いのに“人生の問い”を考えてしまう子

4歳のジェニーという女の子は、祖父の死をきっかけに

  • 「子どもだって死ぬことがある?」
  • 「いつ死ぬかは誰にもわからないよね?」

と、年齢を超えた深い問いを母に投げかけました。

年齢相応の情緒が必要な一方で、高度な論理的思考が同居している: ギフテッド児の典型的な姿です。

ギフテッド理解の鍵:非同期発達とは?

“発達が揃っていない”状態が起こりやすい

ギフテッド児は、

  • 認知:大人並み、または年齢を大幅に超える
  • 感情:年齢相応、あるいは幼い
  • 身体:年齢相応
  • 社会性:興味によって得意不得意が極端

など、発達領域が「バラバラの段階」にいることが珍しくありません。

日本では凸凹(デコボコ)という表現がされていますが、これを 非同期発達(asynchronous development) と呼びます。

外の世界とのズレ(外的非同期)も大きい

学校や社会は「年齢=発達段階」という前提で設計されています。そのため、ギフテッド児は

  • 同級生と話が合わない
  • 興味のレベルがクラスと合わない
  • 授業内容が単純すぎる
  • 「変わっている」と見られる

というズレ(dyssynchrony)が生じ、自分はおかしいのでは?と感じやすくなります。

ギフテッドに多い“過敏性(OE)”とは

心理学者ダブロウスキー が提唱した、ギフテッド特有の強い反応性です。

5つの過敏性
  1. 知性の過敏性:探求心が強く質問が止まらな
  2. 情緒の過敏性:感情の深さ・共感力が非常に強い
  3. 想像の過敏性:物語世界がリアルで創造性豊か
  4. 感覚の過敏性:音・光・臭い・衣類に敏感
  5. 運動の過敏性:体のエネルギーが高く落ち着かない

これらは「問題」ではなく、豊かな内的体験の表れと説明されています!


親ができる5つのサポート

(1) 子どもの“内的世界”をまず受け止める

ギフテッド児にとって最も傷つくのは、

  • 「考えすぎ」
  • 「そんな深刻に捉えなくていい」

といった否定の言葉です。

まずは、
「あなたはそう感じたんだね」
と、本人の世界観を尊重することから始めましょう。

ありのままを受け入れてもらえるセーフスペースがあると感じられることにより、子供の心に安心感が芽生えます。

(2) 論理的な説明と情緒的な安心を同時に提供する

深い問いには丁寧に答えつつ、

「でも今は安全だよ。安心していいよ」

と感情に寄り添うことが大切です。知的な側面と、年齢相応の安心感の両方を満たすことが支えになります。

(3) 学年・年齢に縛られない環境づくり

ギフテッド児には、

  • 年齢より上の本
  • 異年齢の友人
  • 本人の興味に合った習い事

など、「学年」ではなく「適切な刺激」を基準に選ぶ方が合います。

知的好奇心が満たされるような環境を整えてあげるように、気を配ってあげてください。

(4) 同じタイプの子と出会える場をつくる

ギフテッド児は同世代の中で孤独になりがちです。

似た感性を持つ子と出会うことは、自己肯定感の向上に非常に効果的です。

オンラインの場や専門的なワークショップ、趣味のつどいなども選択肢となります。

(5) 親が“ズレ”を理解しておくことが最大の支援

ギフテッド児にとっての救いは、

「私の世界を理解してくれる人がいる」

という実感です。それだけで、心の安定が大きく変わります。

発達のズレや過敏性を「この子の特性」として理解しておくことが、何よりの支えになります。

ギフテッドの本質は“内的世界の豊かさ”にある

Davidson Institute(アメリカのギフテッド教育支援機関) の モーロック博士は、ギフテッドを次のようにあらわしています。

高度な認知能力と強い内面の強度が組み合わさることで、非同期発達が起こり、通常とは質の異なる内的体験を生む。そのため特有の脆さがあり、周囲の理解と調整が必要である。”
(Columbus Group, 1991 /Morelock, 2000)

ギフテッド性は「優秀さ」ではありません。
世界の感じ方・考え方の“質”が違うという生まれ持った特徴です。

日本の親御さんがこの視点を持ってお子さんに接すれば、

  • 子どもの孤独が減る
  • 不安を理解できる
  • 才能と心が健やかに育つ

そんな大きな支援につながっていくはずです。

冒頭にも申し上げましたが、「ギフテッド教育とはエリートを育てる英才教育ではなく、 多様性を育むサポート(支援)教育である」と、声高らかに発信していきたいと思います。


出典・参考

Davidson Institute for Talent Development
Morelock, Martha J. Ph.D.
Giftedness: The View from Within
https://www.davidsongifted.org/gifted-blog/giftedness-the-view-from-within/

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