ギフテッドの種類と階層
ギフテッドとは単に学力が高い子ではない
「ギフテッド(Gifted)」とは、単にIQが高い子どもを指す言葉ではありません。
アメリカの教育法(Every Student Succeeds Act, 2015)では、「知的・創造的・芸術的・リーダーシップ・学問などの分野で卓越した能力または潜在力を持ち、通常の教育では十分に能力を伸ばせない子ども」と定義されています。
つまりギフテッドとは、「学力が高い子」ではなく、「潜在的に大きな可能性を持ち、それを伸ばすために特別な支援が必要な子」です。

ギフテッドの種類:才能の現れ方はさまざま
ギフテッドは、その能力の分野によって次のように分類されます。
● 知的ギフテッド(Intellectual)
高度な論理的思考力、抽象的概念理解、分析力を持つタイプ。IQテストで測定しやすく、学校の成績にも反映されやすい。
● 創造的ギフテッド(Creative)
独自の発想力や豊かな想像力を持ち、既存の枠を超えて考える。アーティストや発明家、科学者タイプに多い。
● 芸術的ギフテッド(Artistic)
音楽・絵画・演劇・ダンスなどで感性や表現力が際立つタイプ。言葉よりも表現を通じて世界を理解します。
● スポーツギフテッド(Athletic aptitude)
先天的に高度な運動能力を備え、身体操作・反射・空間認知において同年代を大きく上回る人。認知的・感情的側面とも結びつき、集中力・自己制御力・リーダーシップにも影響を与えます。
● リーダーシップ型ギフテッド(Leadership)
人をまとめる力や高い倫理観を持ち、組織や社会をより良くしようと行動するタイプ。共感力と判断力が高い。
● 情緒的・精神的ギフテッド(Emotional / Spiritual)
強い共感性と道徳意識を持ち、「なぜ人は生きるのか」といった哲学的問いに幼少期から関心を示すタイプもいます。
これらの分類は重なり合うことが多く、複数の分野に才能を示す「マルチギフテッド」も少なくありません。
IQによる階層分類:数字の目安と特徴
知的ギフテッドの分野ではIQで階層分類が可能であり、下記の分類がなされています。(但し、IQの数値は絶対ではありませんので、他の要素を考慮して総合的にギフテッドを判断します)

補足解説:
- IQは単なる目安であり、才能の発現は環境・情緒・支援の質によって大きく変化します。
- 特にHighly〜Profoundly Gifted層では「非同期発達(asynchronous development)」が顕著になり、感情面のサポートが知的刺激と同じくらい重要。
- この表は、Hollingworth(1926, 1942), Gross(1993), Silverman(1993), **NAGC (2019)**の分類研究を統合して作成。
非同期発達(Asynchronous Development)というギフテッドの特徴
多くのギフテッド児に共通するのが、「非同期発達」です。
これは知的発達と感情的・身体的発達が同じスピードで進まない現象を指します。
たとえば、4歳で小学生並みに読める子が、感情面ではまだ幼稚園児レベルで泣きやすい、というようなケースです。
この「ズレ」が原因で、本人も周囲も戸惑い、時に「わがまま」「落ち着きがない」と誤解されてしまうことがあります。
しかしこれは障害ではなく、高度な知性と感受性を持つ子の自然な発達パターンです。理解と適切なサポートがあれば、豊かな人格形成へとつながります。
ギフテッドの特別なサブカテゴリー
● 2E(Twice Exceptional:二重に特別な子)
ギフテッドでありながら、学習障害(LD)やADHD、自閉スペクトラムなどを併せ持つ子ども。
才能と困難が互いに打ち消し合い、ギフテッドの部分が見逃されやすい層です。
● アンダーアチーバー(Underachiever)
能力は高いのに、学校で成果を出せないタイプ。モチベーション低下や完璧主義、学校文化とのミスマッチが背景にあります。
● 少数派・低所得層ギフテッド
移民など文化的な要因、また貧困などの経済的要因により発見されにくい層。アメリカでは「ユニバーサル・スクリーニング」(全員検査)により発掘が進められています。
● 女子ギフテッド
社会的同調圧力により、自らの能力を隠す傾向が指摘されています。女子が十分に実力を発揮できるよう、自己肯定感を育てる環境づくりが大切です。
現代のギフテッド教育:IQから多様性へ
かつては「IQが高い=ギフテッド」とされていましたが、現代の教育現場ではそれを超えた見方が主流です。
心理学者レンズーリ(Renzulliの「三環理論」は、ギフテッドを「高い能力」「創造性」「集中力:課題へのコミットメント」の3つが交わるところにある現象と捉えます。
また、ガーデナー(Gardner)の「多重知能理論(Multiple Intelligences)」では、知能を8つの独立した分野に分類し、「人それぞれの才能」を尊重します。
このように、ギフテッドは単なる知能の高さではなく、個性と可能性の多様性を意味する概念へと進化しています。
才能を「序列」ではなく「構造」で見る
ギフテッドの世界には「階層(レベル)」と「種類(分野)」の二つの軸があります。
前者はIQなどの能力水準で分けられ、後者はどの領域でそれが発揮されるかで分かれます。
教育現場や家庭では、「どのくらい賢いか」よりも「どのように才能が現れ、どのように支援すべきか」を見極めることが重要です。
ギフテッドとは、“生まれつきの才能”ではなく、“育て方と環境によって開花する可能性”です。
彼らが持つ強い知性・感受性・倫理観は、社会をより良くするためのギフト(贈り物)でもあります。
大人たちがその「贈り物」を正しく理解し、支えることが、未来の創造につながるのです。
💡 参考文献
- Beacon Educator: Gifted – Nature and Needs (2023, Florida DOE Endorsement Course)
- Beacon Educator: Gifted – Guidance and Counseling (2025 Update)
- National Association for Gifted Children (NAGC, 2019): Pre-K–Grade 12 Gifted Programming Standards

